青春時代の清算を。

誰かとの出会いは、いつも書きかけのままで続きを探してる

ロリコンの彼と

初めて同棲した彼氏の話。

20代になりたての頃、初めて地方都市で一人暮らしをした。

右も左もわからない、専門学校中退の田舎者。
夢を持って、未来は輝かしいものと信じきって、ほぼ着の身着のまま、家賃3万円のボロアパートを契約した。


その同時期に、バイト先でお客さんとして来た彼に出会った。堅い職業に就く、6歳年上の彼。

すべて中途半端に生きてきた世間知らずの私にとって、彼はとてもとても大人で。彼から見れば、捨て猫を拾うような感覚だったのだろう。帰り道がわからなくなって橋の下で野宿するしかなくなった私を、拾ってくれた。
それからすぐに惹かれ合って、すぐに恋に落ちて、彼の住む一等地のマンションに転がり込んだ。




もちろん一筋縄にはいかず、大なり小なり問題は常にあった。
だけど彼とは、いろんな面でとても相性が良くて、素のままの精神状態をさらけ出せたし、社会経験もままならない私は、多くのことを彼から学ばせてもらったんだ。




だけどどうしても許容できない問題に陥ってしまった。彼は所謂ロリコンだったのだ。

それは性癖としての嗜好があるだけのことで。そういったビデオや写真で満足できる、実生活には支障をきたさないし、影響もない、と彼は言っていた。



結果、3年経っても私は許すことができずに、だんだんと心が離れてしまった。

若すぎる故に判断を間違ったのか、正しい判断をしたのかは未だにわからない。

だけど、それを知ってからというもの

一緒に街を歩き、小中学生とすれ違うたびに
テレビで見るたびに
雑誌で目にするたびに


『こんな子供に欲情するんだ』


そう思うと、頭から離れなかった。



どうしたって、私は老いてしまう。年を重ねるたびに、きっとつらくなってしまう。

永遠に小中学生の存在を恐れながら生きていくことになる気がして。耐えられなくて、別れてしまった。



彼と別れて、マンションを出ると、私はあまりに無力であったことを思い知らされた。

社会的地位もない。一等地のオートロックマンションも借りられない。せいぜい家賃4万円の、木造のアパートがいいところ。賃貸の価値で、人間の価値も測られているような気がした。




だけど心は晴れていた。もう無理して若いこ向けのブランドを着て気を引くことも、目にする中学生に競争心を燃やすこともない。

そんなこと、彼が望んでいたわけではなかったけれど

知らず知らずのうちに、そうしていた悪い癖。



高学歴だろうと高収入だろうと、精神衛生的に穏やかでいられない相手との生活はいかに苦痛であったかを実感した。きっともう、私がその性癖に気がついた時に、心地のいい関係は破錠していたんだろう。



あれから何年も経つけれど、あんなに話し込んでいて楽しい人には、同性でも異性でも出会えていない。


風の便りで結婚したことを聞いた頃には、私は子供が1歳を迎えようとしていた。

すべて終わった後だけど、また1つなにかが終わった気がした。




別れの時に『同性の友達だったならどんなによかったか』と言われたんだ。あの時は意味がわからなかったけれどなんとなくわかった気がする。

そして、いつしか出会った頃の彼の年齢を超えてしまった。


あの頃の彼と比べたら

社会的にも、人間的にも、
足元にも及ばないかもしれないけれど。


いつか、もしももう一度、彼に会うことがあったなら、いい人間になったなと思ってもらえるように

私は今日も自分を磨いている。